35日目。

2002年9月20日
今日の予定

・オートファジー学会4日目

-----------------------------------------------
学会が終わりました。しかも、実家のパソコンを東風荘で占有している父親も今(19時)は仕事中です。なのでここ数日の日記を書こうと思います。

-----------------------------------------------
9月17日(学会1日目)

今日は学会初日。新幹線は10時20分発。
寝たのは4時。起きたのは7時。睡眠時間が少ないのはいつものこと。出発。

大阪に13時すぎに到着。実家に荷物を置いて、いっしょに来た同僚と待ち合わせをして、会場である大阪大学吹田キャンパスに向かう。

その途中でモノレールに乗る。が、しかし。しかし、モノレールはなぜあんなに揺れるのであろうか。途中に見えるエキスポランドのジェットコースターよりも怖いと思う。(高いし。)

吹田キャンパスに到着。建物がおそろしく綺麗。同僚が言うのには、「うちの建物くらいだよ。灰色で味気ないのは。」・・・いや、そんなことはなく、ただここが綺麗すぎるだけだと思う。

会場に到着。同僚を含めた3人でびびる。外国人がいっぱい。国際学会だし、プログラムでもシンポジウム講演の半分以上が外国人だったのでそれはあたりまえなのだけれど、びびる。どこやかしこで立ち話。そして、びびると同時に異様な興奮状態に陥る。相手は論文の中でしか出会えない人物ばかり。それは興奮するなというほうが土台無理なのだ。

基調講演。この分野をやっているひとなら知らない人はいないという2人が行う。

基調講演のあとはレセプション。ざっくばらんな雰囲気で皆が談笑している。そう。ぼくは無名人。論文も出したこと無ければ、ポスター発表もしていない。そんな人物に声をかけてくることはありえない。そう。むしろ前に出ろ。というかんじ。(昔読んだ幕張というマンガの一節を思い出した。)
そして、前に出た。大物のノルウェー人に質問。

撃沈。・・・何言ってるかほとんどわからないんですけど??

まあ。よい。とりあえず握手して去る。

1時間ほどで退散。途中同僚と別れ、実家にたどり着きすぐに寝る。さすがに疲れていたようだ。

-----------------------------------------------
9月18日(学会2日目)

この日は一日シンポジウム。さすがに2日目ともなると緊張も和らぎ、周りが見えてくる。すると発見。ランディ・ジョンソンですよ!
まさに本人が登板を休んで学会に来たのですか!の如く。100マイルのファストボールですか!との如く。

同僚のひとり(M1)がポスター発表(19日)をするのでポスター貼りを手伝う。すると、さっそく質問を求められる。とりあえず彼女を放置プレイ。今日質問されていたのは日本人だけのようなので、本番のいい予行演習になったのではなかろうか。

プログラムにはシンポジウム後
Dinner in Japanese Izakaya
と書かれていたのだけれど、退去。同僚を実家に招き、夕食を一緒に食べる。

-----------------------------------------------
9月19日(学会3日目)

今日は夕方までシンポジウム。それからポスター発表。

今回の学会には自分をふくめ同僚3人(全員M1)できているのであるが、そのうちの1人が、午前中のセッションをずる休みして、海遊館&ドラえもん展に行った模様。いいのか?まあいいか。

今日も昨日に続き、大物に質問してみる。シンポジウムとシンポジウムの間にcoffee brakeがありそこでも談笑と議論が活発に行われているのだ。

S D Emr

酵母のvacuoleと呼ばれる、いわば蛋白質を分解する細胞内小器官があるのだが、遺伝子の欠損により異常にそこに蛋白質がたまってしまう変異体40種を同定した、すごく、すごーくえらい人なのである。epoc makingなひとである。
質問は単純で、最近、彼のグループが出した論文について気になる点を聞いただけである。
するとEmrは英語を手加減してくれたのかわかりやすく発音してくれた。感動。

ポスターセッションへ移る。別室に貼り付けられたポスターを前にして、演者が説明を求められた時に説明をするというスタイル。
最も気になるのは同僚のポスターがどれくらい関心を持たれているかということ。実際にはポスターセッションが始まると、長蛇の列。人気の高いポスターだったようだ。とりあえず安心して僕自身は別のポスターを冷やかし程度にまわってすごす。
セッションが終わる。ポスター発表の彼女はまったく他の発表を聞けなかったらしい。不完全燃焼と彼女は言う。が、しかし。彼女が不完全燃焼ということは、彼女自身、うちのラボとしてのポスター発表としては大成功だったのである。・・・まあ考えようによってはだが。

-----------------------------------------------
9月20日(学会4日目)

学会4日目。
正直、4日目ともなると疲れが溜まってくる。しかもシンポジウムを聞いていても興味をそそられるものが少ない。
この辺は、他の参加者も同じ思いだったらしい。そしてその表現も露骨。

発表が終わると、"Thank you for your attention"と締めくくり、そこで参加者は拍手をして質問タイムに移るのだが、まず拍手の量が少ない。さらに、質問も少ない。それどころか、会場の外でコーヒーを飲みながら講演を聴いていない。かわいそうなものである。

そこで、昼食を食べ終わると、午後のセッションを聞くことなく帰ることに。


あまり書かれてはいないのであるけれど、はじめての学会はかなり満足度の高い、実りの多いイベントだったのでした。

-----------------------------------------------
同僚たちと別れ、梅田をぶらぶら散策。その際、ジュンク堂にて一條裕子の「犬あそび」を購入。犬を愛していながら、犬を飼いたいと思っていながら、決して飼うことのできない文筆家のおはなし。非常に卓越した言葉遊びと空想を織り交ぜた傑作。この感じだと一條裕子の他の作品も買ってしまうことでしょう。

34日目。

2002年9月19日
今日の予定

・オートファジー学会3日目

-----------------------------------------------
詳細は後日。

33日目。

2002年9月18日
今日の予定

・オートファジー学会2日目

-----------------------------------------------
実家にてこの日記を書いています。なので、詳細は自宅に帰ってから書こうと思います。

32日目。

2002年9月17日
今日の予定

・7時30分までに起きること
・10時20分の新幹線に乗り遅れないこと
・オートファジー学会(? International Symposium on Autophagy)1日目
・英語の基調講演をがんばって聴くこと

-----------------------------------------------------
昨日は、1週間ほど研究室を空ける前の、まとめ実験みたいなのを行った。

・・・western・免疫染色のいずれも、期待した結果が見られず、ことごとく失敗。
(ただ、ここでいうような失敗というのは、定義が少し難しく、もしかしたらそういう「期待した結果が現れない」ことこそが本来細胞内で起こっている事象かもしれないということ。ただ単に、条件が揃わなかったためとか、実験上の手順にミスがあったとかそういうことと区別しなければならない。)

-----------------------------------------------------
実験ははやめに終了。今日は、サークル(フェンシング)の後輩と飲む約束をしていたため、渋谷に向かう。19時から。
ぼくの他には4年生が1人。3年生が2人。もともとはぼくと同学年だったけど留年している3年生が1人。くだらない話をして楽しく飲むことができました。

-----------------------------------------------------
1週間ほど家を空けるので、荷物を詰めなければならないのだけれど、まだほとんどなにも詰めていない。
いつも思うことだが、ぼくは荷造りが下手だ。必ず不必要なものをたくさん持っていく傾向にある。例えばCDだとか、例えば本だとか。道中で消費するのは、いつも用意する半分くらいだというのに。(しかも、旅先でも購入する。)
今回は、学会ということで、ある程度論文を持っていく予定なのだけれど、これもまた消費されないで放置されるのだろう。きっと。

-----------------------------------------------------
Yahooショートムービーシリーズ
「きれいにするとこからはじめよう」をみた。
なんというか、「ずるい」という単語がぴったりの作品だったように思えた。日記にしても、留守番電話にしてもこれはずるいだろうと思えるような脚本が腑に落ちなかった。

31日目。

2002年9月16日
今日の予定

・実験(western blotting 免疫染色 免疫染色のデータ取り込み)
・9時までに研究室に行く
・(体調がよくなれば)飲み会に行く
・飲みすぎず、早めに寝る

-------------------------------------------------------
昨日は、一旦6時ごろに目覚めたものの、喉の痛みなどの体調悪化により、実験を少し止めてでも休んだほうがいいと判断し、午後3時くらいまで寝ることにした。

結局、喉の痛みは引かなかったのだが、火曜日にまでに復調し、学会に影響が出ないことを祈る。

-------------------------------------------------------
というわけで、夕方過ぎにだらだらと行動開始。
研究室に行く途中に、「ピンポン」5巻購入。マクドナルドで食事しながら、読了。よい作品であった。

-------------------------------------------------------
19時に研究室に到着。そのまま、SDS-アクリルアミドゲルをつくる。この時間に到着すると、20時に泳動開始。21時半からメンブレンへのtransfer。23時からblocking。少なくとも、最速で行ってこの時間。しかもここまでやっておかなければ明日の飲み会はない。

結果。
21時〜22時15分 泳動(SDS−PAGE)
22時20分〜23時30分 transfer
23時30分〜over night blocking

transferの時間が短くしたので、蛋白質がメンブレンにきちんとうつったかどうか心配だけれど。
(SDS-PAGEとは蛋白質の電気泳動手法のこと。蛋白質の電荷を一律にマイナスにし、その分子量の大きさと泳動の長さを比例させ、蛋白質を分離させる。)

-----------------------------------------------------
家へ帰る途中に実感したこと。
・会話がループする。(同じ話題が何度も出てくる)

研究室に入ってから、自分の会話能力が低下しているのが手にとるようにわかる。確かに同じような生活を繰り返しているのだから仕方ないといえば仕方ないのだけど。もともと、技術が巧みなわけではないので、情報収集能力の低下と比例していることはわかっている。まあ、意識しても活発に行動できないことはわかりきっているので、少なくともその情報収集という点に関してだけはそのアンテナを活発に働かせたいと思った。

30日目。

2002年9月15日
今日の予定

・実験(western blotting 免疫染色 免疫染色のデータとりこみ)

-------------------------------------------------------
昨日は、午前中に実験をして、その後6時からはラボのOBの結婚式二次会に出席。

しかし、結婚式関連というものは、なんであんなにもさびしさが募るのであろうか?何組かのグループが参加しているのだけど、そのグループ同士で固まって、なんら打ち解けることのない関係。それぞれのグループの人数が10人以上と多くて、他のグループと交流を持つ必要がなく、その結果として雰囲気は停滞してしまう。その場にいる人たちの華やかな服装だけが浮き上がる。

結局、二次会の打ち上げで、研究室のメンバーだけで行った居酒屋のほうが、和気藹々としていたのは大きな皮肉だった。

29日目。

2002年9月14日
今日の予定

・結婚式2次会(横浜桜木町)
・実験(lysate回収 免疫染色)

--------------------------------------------------
昨日は、QIAGENというキットを使って、plasmid DNAを大量精製した。予定していたGST融合蛋白精製が出来なくなったので実験はそれだけ。
残りの大量の時間は、RNAiという、新しく今一番話題の実験方法の勉強に当てた。これは、「DNA→RNA→蛋白質」というセントラルドグマのなかで、合成されるRNAを目的の配列特異的な2本鎖RNAを加えて分解させてしまい、結局蛋白質を合成させなくさせるものである。
この原理を用いた新しいキットが4万円ほどで売られているので、これを買って実験をしたいと考えている。

--------------------------------------------------
「ピンポン」3・4巻購入。先日購入したGOING UNDER GROUNDのCDを聴きながら読んでみた。高校生のときの気持ちを少し思い出した。
あと、少し訂正。昨日の日記で、ピンポンの絵柄は線が太いと書いたのだけど、太いのではなくて、線の太さが一定なのでした。

--------------------------------------------------
今週は睡眠時間が割合(3時間〜4時間)に少なかったので、少し風邪を引いたらしい。
喉が痛い。
来週の大阪行きにかぶらなければよいのだけれど。

28日目。

2002年9月13日
今日の予定

・実験(QIAGEN midi prepによるDNA精製 GST融合蛋白精製)
・論文を読む(メインテーマ RNAi)
・9時に研究室に行く

--------------------------------------------------
大人の世界。昨日は感じた。

ぼくが去年行っていた実験は、目的の蛋白質(仮にAとする)に結合する未知の蛋白質を網羅的に探索しようというものであった。(Yeast Two-Hybrid assayという、この分野での網羅的screeningを行う手法としては、最も一般的なもの。メリットは簡単に大量の遺伝子をscreeningすることができること。デメリットは精度が少し甘いため、結構偽陽性がでること)
その結果、いくつかの候補(B,C)となる蛋白質をコードした遺伝子を得て、実際に蛋白質を発現させて結合実験を行ったところ、(B)および(C)、共に結合を確認できたのである。また、候補のひとつ(B)は、エンドサイトーシスに関わるとされる別の蛋白質(D)と結合することが分かっていたため、ボスである助教授とぼくは相談し、日本で(B)を研究している研究室から(D)の遺伝子および、(できれば)(B)・(D)の抗体をもらおうと考えた。

そこでメール。簡単にいうとこんな感じだったと思う。
-
(A)と(B)は結合することがわかりました。また、(B)と結合する(D)は(A)と同様にエンドサイトーシスに深い関わりをもっていると示唆されます。そこで、先生の行おうと思われている研究と競合しなければ、共同研究というかたちで(D)の遺伝子および(B)・(D)の抗体を頂きたいのです。
-
この文章を翻訳すると、こういう意味になる。
-
(A)・(B)・(D)を使ってエンドサイトーシスの実験を行おうと考えています。結果が出て論文になったらauthorに名前を載せますので、その代わりといってはなんですが、遺伝子と抗体をください。
-

そのメールの返事が19時ごろ返ってきた。簡単に翻訳を交えて言うと
-
(D)はけっこう実験すすめてます。(D)に結合する蛋白質も新たに同定しました。なので、あなたたちが今から(D)を一からはじめるのは難しいと思われます。
ですので、(A)と(D)との関係についての研究はそちらのpriority。(D)自体の研究についてはこちらのpriorityということにしましょう。ということでよろしければ、(B)・(D)の遺伝子、変異導入遺伝子・抗体をお譲りしますよ。
-

さすがに、相手側の先生もなかなかやる。
助教授とぼくは、その結果に少し力が抜ける。まあ、100%こちらが考えているようにはすすまないものだろうし、この結果に関して言えば、80%以上の成功と言ってもよいと思い直した。

--------------------------------------------------
ペンギンズランチ・コレクション
8/10(シークレット含む)
いまだダブりなし。
あとは「ジェンツーペンギンのひな」と「シュレーターペンギン」のみ。

--------------------------------------------------
おととい(11日)、「ピンポン」1・2巻を購入した。ピンポンは映画で観たのだけれど、原作を読んだことがなかったため。Yahooの映画情報の書き込みを見ていると、原作はよいという見解で一致していたようであったし。

読む。

確かに、線が太くベタ塗りの多い絵柄自体は好みが分かれるかもしれないが、そのコマ割・そこから生み出されるスピード感と迫力はさすがだと感じる。

今月は出費がかさむのだが、最後まで買ってしまうことであろう。きっと。

--------------------------------------------------
昨日は9時10分〜23時45分でした。
実験をそんなに詰めていないといえど、この時間がぼくの限界です。これ以上は働けません。

27日目。

2002年9月12日
今日の予定

・実験(western blotting transfection 植菌 PCR)
・論文を読む
・9時に研究室に行く(ゴミ捨て当番)

--------------------------------------------------
今週は、ぼくの掃除班が掃除当番なので、ゴミ捨ても同様に行わなければならない。昨日の到着は9時半。しかし、その到着時には、同じ班の別のメンバーによって、すでにゴミは片付けられていた。
今日こそは9時到着で、ゴミを片付けてみせる。
(帰宅は23時59分)
--------------------------------------------------
おととい(10日)。家に帰る道すがら、死にかけたセミを見かけた。夏の終わり。秋の始まり。よくある出来事。

そのとき、ふと思った。セミは何故成虫になってからの寿命が短いのだろうか?多分、セミの個体自体の寿命は尽きたとしても、セミを構成する細胞は生きる力を有しているのではないのか?

体細胞の寿命を決定する因子として、染色体の端に位置する「テロメア」の存在が挙げられる。体細胞が分裂するたびに、そのテロメアは徐々に短くなってゆき、最後にはその細胞は死を迎える。

多分、そのようなテロメアはまだ残っているのではないかと思われるのに、では何故。

ぼくが考えた仮説は、何らかのデスシグナルが出ているのではないかというもの。生殖を果たし、役目が終わると、遺伝子の発現パターンが変化し、速やかに死へとつながる蛋白質もしくは別の実行分子が増えるのではないかと。このことを、ゆうごはんを食べながら同学年のKくんと話していると、彼は「個体」が死へと向かう機構を有するのは、そのシステムを抱え込むこと自体、無駄なもののような気がするらしい。彼は、生殖を行うことで、解糖系のようなエネルギー産生回路が破綻し、エネルギーがつくれなくなって死んでしまうと考えるらしい。

確かに、そのほうが合理的ではあるな。
でも実際は、どういう仕組みなのだろう。少し気になった。

--------------------------------------------------
ペンギンズランチのペンギンは現在7/10。しかもダブリがないのがよい。

--------------------------------------------------
昨日は、M14人と、去年おなじ学年で、今年は別の大学院にいっている人1人の計5人で23時45分くらいまで飲んでいた。ぼくは途中まで実験が終わらなかったので、うらやましく思っていたのだけれど、途中で
「つまみなくなるよー。」とか
「ビール飲んじゃうよー。」とか言われ、23時ごろにまだ実験が残っているのに、落城。

・・・こういうときは、まず実験は失敗するものだが、案の定失敗を犯していた。

今日の朝、9時に研究室に来てみると、ぼくの実験台に置かれたサンプル。しかも細胞からlysate回収したサンプル。このサンプルは、もちろん蛋白質溶液なので、実験を行うときは氷上に、使わないときとは-80℃もしくは-30℃のフリーザーに入れておかないといけないものなのである。

結論:飲みながらの実験はやめよう。

26日目。

2002年9月11日
今日の予定

・実験(lysate回収 Transfection 植菌)
・CD購入(GOING UNDER GROUND)
・歯ブラシ購入
・論文を読む(RNAiについて 自分のメインテーマについて)

--------------------------------------------------
昨日は、論文紹介。
細胞内で行われている輸送小胞が目標膜に結合する際に、膜と小胞がお互いをきちんと認識するためのSNAREという複合体の形成についてのはなし。去年、学部4年生のときに行った論文紹介は、持ち時間1時間だったところ2時間もかけてやったのに、今年はきちんと1時間程度で終了。若干、成長をしたのかなとも思う。

--------------------------------------------------
論文紹介が終わった後、おととい(8日)につくっておいた、細胞を免疫染色で染めたサンプルを持って共焦点顕微鏡をのぞきに行く。そして、そのサンプルをボスである助教授に見てもらう。それから、その場でディスカッション。1時間半。

正直言って、ボスである助教授と、自分のテーマ関連のディスカッションを重ねて、どうこう言い合うのはとても楽しい。馬が合うとでも言うのだろうか。

--------------------------------------------------
ぼくは、物事についてなんでも、できるだけ思った通りに、できるだけ正直に話したいと考えているし、実際にそうしていると思う。ただ、それは柔軟に対応することのできないという諸刃の剣。
上の文章で、ディスカッションは楽しいというように書いたが、逆に辛さを感じる人もいる。
また、ぼくは、ハイテンションに自分のその白熱したディスカッションのことを周りに誰彼となく話したりする。

今日、同学年のMさんが、そのことで不満を言っていた。ぼくは、自分が正しいと思ったとおりにMさんを諭した。それが、もし正しかったとしても、彼女の気持ちを汲み取ってやさしい言葉をかけてあげるほうが正しかったのではないのか。溜め込んだ鬱憤を晴らしてあげることすらさせず、ただ、自分が思う通りに話すことは本当によいことだと言えるのか?普段から、ぼくの物言いで圧迫感を与えているかもしれないのにも関わらず。

深く思った。

そして、思いつつも、メールすら出してあげることができなかった。

--------------------------------------------------
>>あきぞうさんへ
えと、臨床関係というわけではないです。
分子生物学関係の大学院生をやっています。つたない日記ですがどうぞよろしくです。

25日目。

2002年9月10日
今日の予定

・セミナー(論文紹介・自分)
・実験(免疫染色したサンプルの細胞内局在の確認)
・プライマー設計・発注

--------------------------------------------------
昨日は10時半到着。23時半帰宅でした。

--------------------------------------------------
昨日行った実験、GST-pull downによる結合実験も首尾よくいい結果がでた。どうやら、結合することは問題なさそうである。

--------------------------------------------------
その結果を、直属のボスである助教授のもとに持っていき、その結果についてディスカッション・今後の方針決め。
一応、次の段階として考えなければならないことといえば、機能解析なのであるが、こここそがこの分野で一番頭を使うところである。あるAという蛋白質とBという蛋白質の結合が明らかになった場合、それらの結合の意味を考えるために行う手段といえば、

・細胞内からBの遺伝子もしくは転写産物をノックアウト(除去)し、そのあらわれた影響(特にAが関与する部分での)を観察する。
・BにおけるAとの結合領域を同定し、その結合領域のみを、もともと細胞内に存在するB(全長)に対して過剰量に発現させ、本来結合するはずであるA⇔B(全長)を、A⇔B(結合領域のみ)にさせてやり、Aに対するBの機能を類推する。

などがある。
今回はそのどちらもやってみることになった。
一応、来年の3月をめどに、結果が出ればその時期締め切りの学会に登録し、論文を出す方向に持っていこうという展開に。

まさに、おでこににんじんをぶらさげられた馬のようなもの。修士課程のうちに論文を出すことが出来たら、学振(給料みたいなもの。月15万くらい?)を博士課程1年目からもらうことも夢ではなくなるわけで。

--------------------------------------------------
今日は論文紹介。去年は持ち時間が標準1時間のところを2時間やって顰蹙をかったので、今年は1時間で終わらせたいものです。

24日目。

2002年9月9日
今日の予定

・実験(western blotting transfection 免疫染色)
・論文紹介の準備
・9時台に研究室に到着する。

--------------------------------------------------
昨日は、研究室に10時55分に到着。予定より1時間遅れ。帰宅は23時31分。予定通り。

--------------------------------------------------
先日行った、GST-pull downという手法を用いた結合実験は、予想通りカルシウムに依存して結合を示すことが明らかになった。本当に肩の荷が下りたとはこのこと。これで、少なくとも1年半後の修士論文のことは心配しなくてすむわけだから。(しゃべることはできたので)
この結合実験系では、蛋白を大量精製して実験をおこなっているわけなのだけれど、今後は、この蛋白を実際に培養細胞内で発現させる(つまり量が少なくなる)条件で結合を確認することと、もうひとつは結合だけではない機能解析を行う必要がでてくるのである。
まあ、それも今回行った実験の再現がきちんととれればの話なのだが。

--------------------------------------------------
ペンギンズランチというお菓子が売っている。150円。勘のいいひとならわかるひともおおいだろうが、このお菓子は、海洋堂がプロデュースしているお菓子なので、フィギュアがついてくる。ペンギン。非常にリアルで可愛らしい。現在2個。できれば、このシリーズが終わる頃には全部集めて、水族館にでも行きたいものだ。
・・・横浜から行ける、よい水族館は知らないので、それまでに調べなければ。

--------------------------------------------------
Yahooショートムービー「まだ、あたたかい」をみる。
なんていうのだろう。喧嘩して仲直りする話なのだが、
喧嘩を思い出す場面は一箇所。それはいい。けれど、
仲直りをあらわす記号は「手をつなぐこと」なのか?

質感はよいかも。

23日目。

2002年9月8日
今日の予定

・実験(western blotting lysate回収 免疫染色 細胞継代)
・論文紹介の準備・原稿作り
・9時台に研究室に到着する

--------------------------------------------------
昨日は、体力的に大変な一日だった。なにしろ睡眠時間が1時間半なのだ。6時に寝て、7時半に起きて、10時に学校。それから23時に帰宅。自分のことながら、本当に大丈夫なのかと心配になる。

--------------------------------------------------
ぼくは、土日も研究室にいくようにはしているのだけれど、朝10時から行くというのはあまりない。この日は、1番の到着で、残り3人の時点で帰宅。
というわけで、結構研究室にいた時間は長かったのであるが、結構皆さんが土日返上で来ていることがわかる。
D3…1人/2人
D1…1人/1人
M2…3人/4人
M1…6人/6人
B4…1人/3人
(B4は本来なら6人だけど、院試組3人はまだ実験を開始しておらず、カウントしたのは内薦組の3人だけ)
(スタッフ)
(教授…1人/1人)
(助教授…1人/1人)
(助手…0人/2人)
--------------------------------------------------
というわけで、1時間半睡眠だったということもあり、家に帰ると、日記をつけることもなく寝てしまった。
7時過ぎに目覚めると、全米オープンテニスがやっている。アガシ対ヒューイット。どちらも好きなプレーヤーだけど、今日のアガシは切れがあった。スーパープレイの連続。ホームということもあり、声援もすごかった。早起きして得したというのは、まさにこういうことなのだろう。

--------------------------------------------------
気になっていた日記群を登録させてもらいました。この中には、日記登録がゼロのかたもあったので、ポリシーとして日記登録はしたくないのですというひとだったとしたら、それは申し訳ありませんでしたと先に謝りをいれておきます。そうでなければよろしくおねがいします。

22日目。

2002年9月7日
目が覚めたら15時。

金曜日はなぜ起きられないのか。
まあ、前日研究室から帰る前は、あまりの疲れでふらふらしていたので、それも致し方ないかなと思い直す。
本当に1日3時間睡眠で疲れなければよいのにと思う。

--------------------------------------------------
おかげで実験をひとつ破棄。22時半くらいまで実験を行い、その後OBのお中元で送ってきてくれた缶ビールを3人で飲んで、23時半に帰宅。

--------------------------------------------------
まあ、冷静に考えて、普段10時過ぎから23時までいる研究室での13時間の生活が、17時から23時の6時間になるのだから、その生活の密度が変化しないと仮定すれば、ここに書くことも少なくなるわけなのである。

--------------------------------------------------
家に帰って、テレビの番組を見るのは少々おっくうだったので、今年のツールドフランスのビデオを見直した。
圧倒的なランス・アームストロングの強さ。基本的にはこの事項だけ。じかに戦って勝ち目ない相手とはこのこと。本当に癌を患っていたのかと不思議になる。
あとは、リシャール・ビランクの復活劇。トール・ヒュースホーウトの勝利も感動的。
それから、フランスの夏は景色が抜群。できれば生涯に一度は沿道で応援してみたい。
(ちなみに、他に生涯で一度は生で見てみたいスポーツは、ゴルフのマスターズ。競馬の凱旋門賞とブリーダーズカップ。国内ならアメリカンフットボールの甲子園ボウル。)

今日から自転車3大ツールのひとつヴェルタ・エスパーニャが始まる。まあ、映像を見ることは出来ないので、自転車系のHPの掲示板や、cyclingnews.comなんかで情報を手に入れるしかないのだけれど。

---------------------------------------------------------
今日の予定

・実験(GST融合蛋白質の精製 lysate回収 GST-Pull Down assay 今日こそ顕微鏡)
・9時(台)に学校へ行く
・論文を読む
・論文紹介の構図を考える

21日目。

2002年9月6日
今日の予定

・実験(GST融合蛋白精製 Transfection 共焦点顕微鏡でのサンプルの写真取り込み)
・論文を読む
・9時に学校に行く

---------------------------------------------------------
昨日は9時半着。23時50分帰宅でした。

---------------------------------------------------------
昨日の実験は、いわば引き分けでした。
結合するであろう部位のレーンで、でてほしい位置にバンドがでたのはよいのですが、他のレーンでも同じ位置にバンドがでてしまったためです。明らかに濃さが違うようには見えますが、このままでは人に見せるデータとはなりえません。というわけで、もう一度仕切りなおしになります。

---------------------------------------------------------
10月から、新しい博士課程の学生が2人増えるらしい。ひとりは中国人の留学生。もうひとりは、5月からあたらしくやってきた助手のひとのもといた研究室の教え子。
先生の話によると、そのうちの中国人の留学生は、新しく研究生活を始めるためのラボを選ぶのに、候補となるラボを見学にも来ないで決めてしまったらしい。確かに、紹介のときの印象と、実際に中に入って生活をするというのはギャップは存在するとは思うが、それにしてもなにもなしにやってくるのは、狂ったギャンブルにしか考えられないのであるが。

---------------------------------------------------------
とにかく17日の大阪での学会に行くまでに、今やっている実験はある程度けりをつけておきたいので、フルパワーで働いています。

20日目。

2002年9月5日
今日の予定

・実験(GST-pull down→western blotting 顕微鏡による免染写真の取り込み 細胞継代 細胞ストック)
・論文を読む
→1.10日の論文紹介のための論文など
→2.自分のテーマに大きく関わる論文
・がんばって9時に研究室に行く
・なんとか23時過ぎまでに仕事を終わらせる

---------------------------------------------------------
今日の実験は、かなり自分にとって重要な実験である。蛋白質が結合するかどうかということを確認するassayなのであり、そのことはよいのだが、いままでの結合実験では何も考えずに細胞を溶かして蛋白質を溶出して行っていたのに対し、今回はもう一つのファクターを追加してみたのである。

Calcium.

このたった一つのファクターを加えたこと。誰も知らない、その蛋白質同士の結合にカルシウムが必要であったため、今までの実験が失敗していたのである(つまり結合を確認できなかった)ことを祈る。切に祈る。

---------------------------------------------------------
昨日は大したことはなかったのだけれど、研究室の窓から見えるグラウンドで、花火をやっている人たちがいた。

夏の終わりの花火は、はかなく、せつない。

来年までごきげんよう。花火。

19日目。

2002年9月4日
この前、あるサイトを見ていたらこんな記述があった。
------
ダメ人間とは自分の夢があきらめきれず社会に適応できない人間や高い学歴や知識、教養があるにもかかわらず性格的、精神的なわがままのために、まともに就職できていないような人間のことです。

志は高いので話をするとまともな人のような気がしますが深く話し込むと社会に対しての不満をいいはじめます。その割にめんどくさがりやなのでぬるま湯のような現実に流されています。

ダメ人間は、結婚できない人とか、詐欺にだまされた人とか、宗教にはまってしまった人とかなどとは違います。そういう人たちはダメな人間です。ただ、ダメ人間とダメな人間を兼ねてしまっている人もいます。
------
リンク元(http://www.asahi-net.or.jp/~gb3k-fkd/dame.html

この定義によると、ぼくはかなりダメ人間に分類される。特に、「その割にめんどくさがりやなのでぬるま湯のような現実に流されています。」という記述。

ダメ人間だけど、ダメ人間を改めることも、改めるつもりすらなく、ぼくは生きています。

--------------------------------------------------
今日の予定

・実験(cell lysate回収 GST-pull-down assay transfection 細胞ストック 顕微鏡による観察)
・今日こそ学会会費振込み

18日目。

2002年9月3日
今日の予定

・実験(免疫染色 細胞継代 細胞ストック)
・論文を読む
・論文を整理する
・セミナー(実験報告・他人)

--------------------------------------------------
常々、思うのであるが、一般のひとは誤解している。


一つ。別に勉強が好きだから大学院に行っているのではありません。

一つ。別に、やっていることはそんなに頭をつかうことではありません。

一つ。「難しくてわたしにはさっぱりです。」と言われるのだけれど、多分、どんな職業だって、どんな学問だって門外漢にとっては「難しい」ことなのです。

一つ。学生だけど、夏休みはありません(でした)。

--------------------------------------------------
今日、同じ学年のひとが手帳にメモをしているのを見かけた。

そのひとは、デスクのカレンダーや実験ノートがずいぶん面白いひとなので、その手帳も必ずや面白いにちがいないのだが、オフィシャルのものではなく私的なものなので本人の許可がないと見ることはできない。
聞いたところによると、その手帳には日記が書いてあるらしい。
しかも中学生の頃から。

その話を聞いて、ある小説の一節を思い出した。
同じように日記をつけていた父が死んで、娘たちが日記を見つける話。

そんなことを冗談めかして伝えると、絶対見られたくないみたいなことを言っていたけれど、分かる気がする。ぼくの場合は、こういうかたちでネットに記録を残しつづけているけど、なにかがあって死んでしまうようなことがあったら、こんな記録は残っていてほしくない。残る力を振り絞って消すことが出来たら本望だ。

ああ。あと考えたこと。メモのなかに、ぼくは何度か登場したことがあるらしいけれど、これからのその記録のなかにぼくはあと何回くらい登場するのだろう。と。

17日目。

2002年9月2日
今日の予定

・実験(GST融合蛋白精製 細胞継代)
・論文を読む
・論文を整理する。
・朝10時に研究室に到着する。(他人と同調して実験を行うため)

-------------------------------------------------
いくつか気になる日記がある。こういうときは勝手にお気に入りに入れてよいのだろうか。というのも、その日記の筆者が交換日記システムを是認している保証はないからだ。ぼくが自らお気に入りに入れた人は3人。これらのひとはすでに交換日記システムを稼動させていた。
問題になるのは、交換日記システムを稼動させていない、つまりお気に入り登録をしてもいないし、されてもいない人。まあ、こちらがお気に入りに入れるのは勝手という意見もあるけれど、お気に入りに入れるということは交換日記システムを稼動させてくださいという、極端に言えば強迫にならないだろうか。(つまり見るだけならブラウザーのブックマークに入れろという意見。)

こんな無意味なことをぐずぐずと考えた。こんなことを書いてはみたものの、きっと入れたくなる瞬間には入れるだろうし、そうならない限り入れないだろう。(もちろんお気に入り登録をしてもらうという特異なケースはこちらも登録するけれど。)

--------------------------------------------------
今日の予定の「10時に来る」というのは無理でした。30分遅れました。

--------------------------------------------------
今日の実験は、先日条件検討したGST融合蛋白のLarge scaleでの精製である。あとは、細胞へのTransfection。いずれにしても、待ち時間だけ長く、かなり暇な実験。

そのため、今日もまたデスクで論文を読んでいたわけである。読む論文は山のようにある。ひとつは自分のテーマに関するHot Paper。ひとつは来週に迫った論文紹介に関する論文。本来なら論文紹介のために、そのバックグラウンドを固めるための論文を一番に読まなくてはならないのであるけれど、自分のテーマに関するあまりに重要な論文がでたために、それどころではなくなったという感じ。ボスの助教授と我を忘れた感じで総括しあう。まさにぼくがやっている実験がこの分野の鍵になる可能性もでてきている。少なくとも、次回の実験報告では、正味の報告だけではなく、論文で展開されている世界観を話す必要がでてきたわけである。まあ、もともと去年やっていたテーマがTwo-Hybridという実験手法を用いて、目的の蛋白質とさまざまな蛋白質をコードするDNA libraryを用いて網羅的にscreeningを行うといったものだったため、結合する可能性がある釣れてきたモノのバックグラウンドをいずれは詳しく説明する必要があったわけなのであるから、落ち着くところに帰結したわけなのである。

16日目。

2002年9月1日
今、1時間近くかけて書いていた日記が消えました。かなりのショック。(020902 02:00)

--------------------------------------------------
今日の予定

・実験(GST融合蛋白精製 細胞継代 Transfection)

--------------------------------------------------
今日の実験は昨日の続き。GST融合蛋白質の精製である。
「GST」とは、簡単に言えば目的の蛋白質に付加するgeneralなポリペプチドのことであり、この実験系の利点としては
・大腸菌で大量精製できる。
・真核生物の蛋白質を原核生物で精製するため、目的の蛋白質のみを効率よく精製できる。
などがある。まあ、単純で簡単でたくさん作れるので、頻繁に利用される実験法である。

この実験は、比較的長い待ち時間とともに、もうひとつ嫌なことがある。ホモジナイザーという超音波発生器を使って大腸菌を破砕することである。この作業、D1の先輩曰く「脳細胞が破壊される」感覚。しかも今回は生成条件検討のため、サンプル数も多い。そこで、とりあえずウォークマンを用意。曲はBonnie Pink。開始。

30分後。脳細胞は破壊されました。

今後、今年1年でどれだけの脳細胞が破壊されつづけるのだろうか。

--------------------------------------------------
昨日の出来事

今、Yahooでショートフィルム特集みたいなのをやっている。映画を見に行く時間すらないので、このシリーズを見てみようと思う。
以下短評。

1「ずぶ濡れのココロに架かる虹」
ヒロインが非常にかわいい。けれど、落ちがもうひとつ。

2「高男とカミさん」
カミさんがアップになったときの不細工さ加減がよい。ある意味、古典的な構図だけれど、対称性がうまくだせている気がする。

3「TANABATA」
研究室で見ていたのにも関わらず、あまりのノスタルジックに泣きそうになる。いや、実は泣いた。

< 8 9 10 11 12 13 14 15